ひとりひとりの真実
真実は人の数だけある
「事実はひとつ」です。世界中どこでもこれは同じ。起こったことそのものが「事実」だからあたりまえです。
しかし、事実はひとつでも人それぞれの感じ方は、全員違います。
全く同じ感じ方をする人は存在しません。それが人間というものです。
職場で「飲みに行こう」となったとき、下戸のA君だけが誘われなかったとします。
このときの事実は、「同じ職場の5人がお酒を飲みに行った」ということだけです。
それ以下でもそれ以上でもありません。起こったことから感情を抜けば事実、という考え方です。
職場5人のリーダー格であるBさんは、
「A君はお酒が飲めないから誘わないでいてあげよう」
または
「金曜日は英会話のレッスンに通っているって言っていたなあ」
という理由で誘わなかったのかもしれません。
でも、A君は「当然、自分も誘ってくれるもの」と思っていたのに誘われなかったので、
「Bさんに嫌われている」と感じてしまうかもしれません。
または、Bさん以外の他のメンバーに、A君を嫌っている人がいる、と感じるかもしれません。
逆に、A君には飲みに行きたくない理由があり、事前に「金曜日は英会話」とふれ回っていたのかもしれません。
その場合は、思惑どおりに事が運んだわけです。
実は、BさんはA君がキライ、ということもありえます……
しかし、A君は英会話教室に行くので、Bさんが気を使ってくれているんだ、と思っているのかも知れません。
人の心は、非常に複雑です。
いくらでも、どうとでも考えることが出来ます。
事実はひとつなのですが、人それぞれの心により、全く違った風景が見えてきます。
そして大多数の人間はネガティブ思考になりがちですので、あまりいい考えに行きつくことはありません。
それが人間関係をスムーズにできない理由のひとつなのではないでしょうか。
「みんなで飲みに行くけど、A君は英会話だっけ?」とBさんがひとこと聞くだけで、
A君が行こうが行くまいがスムーズに話が進みます。ベストとはいかないまでもベターな方法のひとつでしょう。
ただ、一度、英会話を理由に断ってしまったら、次からは誘われなくなるでしょう。
「今日は、英会話教室は休みなので、飲みに連れて行って下さい」
と自分で言わなければ、A君は次から一緒に行くことは難しいかもしれません。